2000年5月30日火曜日

ピカソ展

 先日、ようやく「ピカソ 子供の世界」展を見に行ってきた。 近代や現代の絵画の多くは、見る人に何かを訴えるのではなく、自己満足に過ぎないような気がするが、ピカソの作品からは、彼が奇妙な絵を通じて言いたかったことが伝わってくる。  

 たいていの画家は、自分の作風が定まるまではいろいろな試みをするが、いったん世にに認められるスタイルができあがると、同じパターンをくり返すようになる。売れ筋の作品を大量生産しているだけではないか、とつい疑いたくなる。  

 ところが、ピカソは違う。キュビズムという表現方法を見出したあとも、ピカソはオーソドックスなスタイルに戻ったり、子供のような絵を描いたり、あれこれ試行錯誤をくり返す。巨匠と言われるようになっても、決して現状に満足せず、晩年になっても新しい試みをつづける彼の姿勢が、私にはとても新鮮に感じられた。

 展示室の一画に、ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」をテーマにしたピカソの作品が何枚も並んでいた。ゴッホもミレーの模写をたくさんしていたが、ピカソのような天才も、昔の偉大な画家の作品研究を怠らなかったのだろう。もっとも、ピカソの場合は、模写というよりは、ベラスケスの絵のエッセンスだけを抜き取ったような絵だが、見比べてみると、構図だけはおもしろいくらいに忠実に真似ている。  

 それにしても、ピカソの描く人物や動物には愛嬌がある。ベラスケスの絵のなかの厳つい犬も、ピカソの手にかかると、たまごっちのキャラクターかと思うような素っ頓狂な顔になる。子供のような感覚を失わないところも、私がピカソを身近に感じる原因の一つだろう。

 6月18日まで上野の国立西洋美術館でやっているので、まだの方はぜひどうぞ。