2001年11月29日木曜日

青い鳥

 なんだか11月はあっというまに過ぎてしまったような気がする。忘年会のお知らせをいただいて、えっ、もう年末?と驚いている始末。このところ忙しかったせいで、とくに遊びにも出かけていない。それで、大して書くべきこともないのだが、ちょっとだけうれしいことがふたつあった。  

 ひとつは、例のしし座流星群だ。11月18日、みなさんは夜空を見あげただろうか。バンコクではふだんからあまり星が見えないので、あまり期待はしていなかったが、とにかく夜中に起きて、下のプールサイドに行ってみた。ここは東向きで、まわりは湿原で視界が開けているので、流星観測にはなかなか向いている。夜風もさわやかだ。同じことを考える人が少なくとも何人かはいるだろうと思ったのに、アパートのほかの住人は流星には興味がないらしい。  

 待つこと数分。すーっと大きく弧を描いて星が流れた。うわっ、流れた! 興奮のあまり、つい願いごとをするのを忘れる。そのうちに、あっちにも、こっちにも見えはじめた。いつのまにか10個までかぞえていた。3個がほぼ同時に見えたこともあった。結局、しーんと静まりかえったプールサイドで30分ほどねばり、合計25個も見て、たっぷり願いごともして、満足して部屋に戻った。  

 翌日、この結果を日本にいる母に得意になって報告した。すると、すぐにメールが返ってきて、1時間で100個以上見たよ、と言われてしまった。日本の11月はさぞかし寒いだろうに、それだけ頑張って夜空を眺めていた母の姿を想像して、思わず笑ってしまった。野辺山では1時間に5000個とか。それこそ雨のように降ったのだろうか。タイ語で雨が降るはフォン・トック。流星はダオ・トック。たくさんだとフォン・ダオ・トックと言うらしい。  

 ふたつ目は、青い鳥を見たことだ。日曜日の朝、まだうす暗いうちに家を出て、いつものとおり近所の沼地にバード・ウォッチングに出かけた。めぼしい鳥がいないので、ぼんやりと電線を見ていたら、そこに止まっている鳥の色が普通ではないような気がした。ねえ、あの鳥、青くない? 青いよ! 図鑑で調べてみると、ロクショウヒタキというらしい。体長17センチほどのまさに緑青色の小さな鳥で、冬になるとタイに来るようだ。  

 そのあと、いつものクイナのいる沼に行き、餌を捜しているクイナの姿をたっぷり楽しんだあと(遠すぎて写真は撮れなかった)、そばの家のアンテナの上に、なんだか見たことのない鳥が止まっていることに気づいた。それもなんと青かった。「今度のはもっとウルトラマリンみたいな色だよ!」と、娘が興奮して叫ぶ。パッと飛びたったときに、オレンジ色の胸が見えた。「わかった! カワセミの一種だ!」。あとから図鑑で見てみると、確かにヤマショウビンだった。青い鳥を2羽も見られたので、その日一日、娘はとびきりの上機嫌だった。  

 メーテルリンクの言うとおりだ。幸せの青い鳥は本当に身近なところにいるのかもしれない。