2001年10月30日火曜日

雨季の終わり

 タイでは、そろそろ雨季も終わりになってきたらしい。いちばん雨が降ると言われる10月には、何度か道路が水浸しになったことはあったけど、バンコクでは思ったほどの被害はなかった。  

 一年中暑いタイでも、最近はいくらか秋らしい気配がする。空が高くなって鱗雲が出る日もある。それにアカガシラサギ、オオヨシキリ、ハイイロオウチュウ、コウライウグイスなど、タイの冬鳥が姿を見せはじめた。ダイサギと思われる一群や、スキハシコウが連なって飛ぶ姿もときどき見られる。  

 週末になると、早朝や夕方に鳥好きの娘に付き合わされてよくアパートのまわりの沼地を歩きまわっている。もっとも、私は双眼鏡が苦手で、目当ての鳥がうまく捜せないうえに、見ているとコンピューターの画面をスクロールしたときのように気持が悪くなる。だからもっぱら肉眼で、変わった鳥捜しをする役目に徹している。  

 最近は、すぐ近くの沼にいるシロハラクイナをなんとか写真に撮ってやろうと思っているのだが、すごく臆病な鳥で、すぐに逃げられてしまう。物陰に身を潜めて待っていると、怪訝そうな顔をした野良犬がすりよってくる。「あっち行って、しーっ!」と言っても、ぽかんとした顔でこちらを見るのもいる。犬もタイ語じゃないと通じないのかなあ。  

 気分だけでも秋の感じを出そうと、このところ二度ほどアイススケートにも行った。バンコクにもちゃんとアイススケート場があるのだ! カナダ人とおぼしき親子連れが、場内に入ったとたん、「オー、ナイス・クール・エア」とか言っているのを聞いて、思わずうなずいてしまった。排気ガス臭い生暖かい空気ばかり吸っていると、ときどき雪国の鼻につんとくる空気を無性に嗅ぎたくなる。  

 行く前は、タイ人でもアイススケートができるんだろうかと思っていたが、リンク内はバンコクの道路さながら暴走族でいっぱいだった。とにかくほかの人のことはお構いなしに勝手に車線変更をし、人のあいだを縫って猛スピードで滑る。  

 私は子供のころ、よく友達と船橋ヘルスセンター(!)のスケート場に通っていたので、いまでもバックのクロスくらいまではできる。でも、スキーもそうだが、やはりもう無理はできない。どこか気持がスピードに負けているのだ。例のカナダ人は、元アイスホッケー選手だったのか、氷の上をそれはみごとに自由自在に滑っていた。おそらく、ときどきこのリンクに来て、自分の腕前がまだ鈍っていないことを、まだ若さが残っていることを確認しているのだろう。  

 ところで、雨季が終わったころにあるお祭りとして有名な、ローイクラトンという灯篭流しが、今年は10月31日の満月の夜にある。せっかくだから見に行きたいのだが、その翌日、娘の学校で実力テストがあるので、夜遊びはやっぱりやめておくべきか、いま悩んでいる。 

 ここまで書いたところで、タイ語の学校に行ったら、帰りにどしゃぶりに遭い、全身ずぶぬれになってしまった。ああ、まだ終わっていなかったの……雨季……?