2010年2月28日日曜日

インターバルカメラ

 昨秋からあまりにも忙しい日々がつづいて、放りっぱなしにしていたものを、いまごろになって片づけている。何よりもまず、商売道具であるパソコンのハードディスクを占領していた、大量の写真の整理だ。原因はインターバルカメラ。  

 娘が卒論のテーマに鳥と果実の対応関係を選び、研究室からインターバル撮影のできるカメラを何台か借りていたのだ。30秒とか1分間隔で設定し、日の出から日の入りまで実のなっている木を撮影し、そこへやってくる鳥の採食現場を撮影しよう、という目論見からだった。どんな具合に撮れるのか試したくて、私も空いているカメラを拝借し、うちのフェンスに繁茂しているノブドウで二週間ほど実験してみた。簡単にできそうで、これがなかなかうまく行かない。メジロやヒヨドリがきているのが声でわかっていても、カメラにはなぜか写っていない。たとえば、30秒間隔で撮影しても、滞在時間が29秒だったら、シャッターが下りた瞬間にはもういないわけだ。小さな鳥は、焦点が合っていなければ、写っていてもシミにしか見えない。1日に撮影できた1000枚近い写真を見る作業は、目を酷使する以外の何ものでもない。防犯カメラから犯人の姿を捜す捜査官も、こんな思いをしているのだろうか。 

 見れども見れども、同じ光景の写真がつづく拷問のようなチェック作業にめげて、パソコン内に未確認のままの写真が増えつづけた。そのうち、いつの間にか実もなくなり、私の素人実験は終わりになった。これだけやって、はっきりと鳥の姿が確認できたのは2枚だけだった。大量の写真をただゴミ箱行きにするのも悔しいので、天気が急変した日と、秋の夕暮れの「つるべ落とし」がわかる写真を抜きだしてみた。日の光は色の魔術師だ。  

 ところで、ノブドウを撮影してみたのには理由がある。ノブドウは青やピンク、紫のパステルカラーの実をつけるので見た目には美しいけれど、このきれいな色は虫こぶ、つまり虫が寄生しているために生じる産物であり、実そのものはまずくて鳥すら見向きもしない、などとよく言われているからだ。本当だろうか? ネットで検索すると、「ブドウタマバエやブドウトガリバチが寄生」といった記事がわんさかでてくる。ところが、ブドウタマバエという蝿も、ブドウトガリバチという蜂も存在しない。いるのはノブドウミタマバエという蝿とブドウトリバという蛾らしい。ブドウ科の植物を食べるこれらの虫は、確かにノブドウに寄生するようだけれど、ブドウトリバはブドウ科のほかの植物の害虫でもある。それならなぜ、ノブドウだけが虫こぶだらけ、などと言われているのだろう?  

 夏に雨が多かったせいか、残念ながらうちのノブドウはあまりきれいに色づかず、カビが生えて腐ってしまった部分もあった。だから正確にはわからないが、私が観察した限りでは、黄緑色の未熟な実は、薄茶→ピンク→薄紫→水色→透き通った薄緑色に、4日前後で順繰りに変化していた。薄緑色になるともう色は変わらず、いつの間にかすべてなくなっていた。メジロが食べているところを、一度だけ目撃した。実は食べても大丈夫なのだろうか? ネットで調べてみると、ノブドウの実はなんと肝機能の改善から水虫にまで効く薬やサプリメントとして、かなりの高額で売られている! ノブドウの謎解きは今年に持ち越しだ。アパートの管理人には申し訳ないが、またノブドウを繁茂させるところから始めなくては。

 ノブドウの色の変化

 秋の日はつるべ落とし

 一天にわかにかき曇り

 庭で見かけた生き物