予定よりかなり早く湯島天神の用事が終わり、次の予定まで時間が空いたので、久々にアメ横に寄ってみた。10年ぶりくらいに見るアメ横は、なんだか小ぎれいになり、狭くなったような気がした。バンコクのチャトゥーチャック市場のような強烈な場所に慣れてしまったからだろうか。昔はアメ横に来ると怪しげな小物を並べているお店に寄るのが楽しかったが、今回は気づくと食品店ばかりのぞいていた。おばさん化したのは間違いない。
もちろん、理由はちゃんとある。緑豆を探していたのだ。ご存じだろうか? 春雨の原料となり、日本ではもっぱらモヤシに使われている小さい緑色の豆だ。本のなかでこのムング・ダールを使った料理が何度かでてきて、どうしても実物を手に入れたくて仕方なかったのだ。ネットで捜せば、販売しているところは見つかるけれども、たかだか数百円の豆を買うのに、それ以上に送料がかかるのはばからしい。御徒町なら売っていると言われたのを思いだして乾物専門の店を何軒かのぞいたら、1キロ300円で売っていた。ずっと持って歩いたら重いな、と思いつつ、ほかにもサンザシの実やトッポッキなど、一度食べてみたいと思っていたものを買い込んでしまった。
翻訳の仕事をしていると、見たことも聞いたこともないものによくぶつかる。いまはネットで検索すれば、たいていのものは色や形状までわかるが、功能や由来を読んでいるうちに、やたら想像力を刺激されて、私はどうしてもそれを食べてみたくてたまらなくなる。最近も、ニシンの干物について読んだあと、食べ方もよく知らないのに身欠きニシンを一箱買い、何日もつづけて食べるはめになった。おかげで、ニシンばかり食べつづけた昔の人の境遇に、少しは思いを馳せることができたが。いま頭を悩ませているのは、ハンバーガーにエキストラ・チーズというトッピング付きのピザだ。少なくとも、文面からはそうとしか読みとれない。宅配ピザは頼まないし、ピザ屋もめったに行かないので、私がこの奇妙なピザを知らないだけだろうか? それともこれはアメリカにしかない特別なピザ? このピザは想像するだけで胃がひっくり返りそうなので、試さないことにしたが、同じ本にでてきたピーチ・コブラーというデザートは、クリームを少なめにして、いつか挑戦してみようと思う。