2012年11月29日木曜日

タイ旅行2012年

 久しぶりにタイにきている。前回はほんのストップオーバーだったので、バンコクの街を歩くのも、本格的に鳥を見に行くのも数年ぶりだ。遊びに行く旨を伝えると、鳥見仲間が声を掛け合ってツアーや夕食会を企画し、マレー半島の付け根にあるケンクラチャーン国立公園を案内してくれ、今週末は北部のメーウォンにも行くことになっている。  

 今回、意外だったのは、乾季であるはずの11月末に、毎日、ゲリラ豪雨のようなスコールに見舞われていることだ。バンコクではオート三輪のトゥクトゥクに乗っているときに土砂降りに遭い、右側半身がずぶ濡れになった。ケンクラチャーンの公園内では穴ぼこだらけの急傾斜の山道をピックアップトラックの荷台に乗って猛スピードで登ることになったが、途中、何度も川の浅瀬をジャブジャブと渡らなければならない。雨季には3ヵ月間通れないらしいが、乾季でもこれだけ雨が降れば、水位が高すぎる日もでてくるだろう。  

 熱帯の気候は、熱帯収束帯が南北に移動することでやたらに雨が多くなったり、逆に干ばつになったり、極端に揺れ動くという。堆積物や洪水などで川筋が変わることもある。タイにこられなかった数年間にあれこれ読んだ本のなかで、私はタイ中部をチャオプラヤ-川とほぼ平行して流れる支流のターチン川に興味をもってきた。なにしろ、アユタヤ王朝の創設期に深くかかわっていたスパンブリーやウートンなどがこの川沿いにあるだけでなく、この川はかつて「最初の市」を意味するナコーンパトム付近で海に注いでいたと言われているからだ。川の名前そのものも、中国の港(桟橋)を意味する不思議な名前だ。元時代の史料に、フビライ汗の使節が川をさかのぼってナコーンサワンと思われる「上水」を訪れている記録もあり、その川とはチャオプラヤ-ではなくターチン川で、この川のほうがかつては大動脈だった可能性すらあるのではないかと私は想像を巡らしてきた。短い小論文もどき(angkorvat.jp/doc/cul/ang-cul26.pdf)を書いてみたことすらある。これまで推理してきたことを現地に赴いて少しでも確かめてみたい、というのが今回の旅のもう一つの目的だった。  

 鳥見旅行の帰りに友人たちに連れて行ってもらったターチン川の河口域はいまでもかなり広く、大型船が多数停泊していた。スパンブリーからナコーンサワンのあいだにあるターチン川とチャオプラヤ-川の分岐点にも行ってみた。川沿いをずっとたどったわけではないが、この川は最上流地点でも小舟なら航行できそうなことがわかった。分岐点には、水の神ナーガが祀られた寺院があった。北部から流れてくる四本の川が次々に合流し、最終的にチャオプラヤ-川となる合流点パークナムポーにも行ってみた。「上水」と思われる場所だ。ついでにタイ最大の淡水湖である人造ダム湖ブン・ボラペットにも行き、広大な湖でボートを借りて水鳥を見て楽しんだ。ターチン川沿いにある100年市場と呼ばれるサムチュックが栄えた当時は、この一帯の川も地形もまるで違っていただろう。気候変動で水の循環が大きく変わろうとしているいま、川の歴史をたどることは大きな意味をもつに違いない。

 トゥクトゥク

 ターチン川の河口域

 ターチン川とチャオプラヤ―川の分岐点

 ブン・ボラペット