2002年11月30日土曜日

健康オタク

 不覚にも風邪をひいてしまった。今年は娘が受験なので、この冬は絶対に風邪をひかせまいと決心した矢先に、もう自分がやられているのだから情けない。

「平熱が36.4度以下の人は異常だと思ってください! 体温が低いと風邪もひきやすいんですよ!」と、学校の保健の先生もおっしゃっていた。平熱の低い私には耳の痛い話だった。言われてみると、人一倍冷えやすいことも、足腰がだるいことも妙に納得がいく。きっと血の巡りが悪いのだろう。中学のころから貧血気味なのも影響しているかもしれない。それとも、このごろよく言われる「ドロドロ血」なのだろうか。  

 いままでは、ときおり体調を崩すことはあっても、自分が不健康だと思ったことはなかった。私の母は食生活にやたら関心が高くて、耳にタコができるほど栄養のバランスやら食品添加物の話を聞かされてきたので、子供のころはもっと好きなものを自由に食べたいとばかり思っていた。高校時代にアメリカで過ごしたときは、トルティヤ・チップスとチーズとビールで夕食をすませたり、夜遅く突然アイスクリームを食べに出かけたり、といった生活が新鮮に思えたほどだ。別に何を食べても生きていけるじゃない、とそのころは思っていた。 

 でも、不摂生や無理を重ねてきた人たちが四十代、五十代になってまわりでバタバタと倒れはじめると、やはり気になる。これまでも世間一般の人よりはまともな食生活をしてきたつもりだが、その程度ではもって生まれた体質の欠点は治らないかもしれない。そこで、とりあえず実験だと思い、健康にいいと言われる食材を片っ端から試してみた。きのこ類にナッツ類、大豆、ゴマ、ニラ、小松菜、モロヘイヤ、アボガド、キウイ、カボチャ、鰻、牡蠣、レバー、ニンニク、ショウガ、唐辛子、酢など、あげだしたらキリがない。苦手な「背の青い魚」も週に一度は食べるように心がけている。  

 さて、その効果は? 気のせいか、手足が温かいことがいくらか多くなったようだ。また、ここ数年、左脚がしびれがあったのだが、最近はまったく感じない。コンピューターによる目の疲れすら、いくらか改善されたようだ。頭の回転のほうにはあまり改善は見られないが。こうなると、ますます健康食品にたいする関心が高まり、納豆がいいと書いてあれば、その日の夕食には納豆が並ぶ、バナナは免疫力を高めると言われれば、おやつに焼きバナナをつくる、といった具合だ。もうこうなったら私も立派な健康オタクだ。  

 というわけで、健康に気を遣ってきたつもりなのに、風邪をひくとは。低体温を克服するにはまだ当分かかるのだろうか。身体を冷やさないようにして、夜は早めに寝てもいるので、いまのところ寝込まずにすんでいるが、頭がぼんやりしていて仕事にならない。 

 もっと一気に体質改善するには、いま流行のサプリメントでも大量に飲まないといけないだろうか? 薬っぽいものはどうも苦手だ。ビタミン剤や鉄剤はそれでもときどき服用するけれど、あくまで「サプリメント=補助」にとどめておきたい。何十年も飲んだのちに、あれには副作用がありました、なんて言われるような気がするからだ。野菜や肉や魚だって、いまは何が入っているかわからない時代だが。  

 結局、なんだかんだ言いながら、子供のころに母にがみがみ言われたことを、いまごろようやく納得して実践しているのかもしれない。