なにしろ、私はマニュアルを読むのが嫌いで、レシピや説明書もきちんと読まない。料理に時間をかけたくないから、できるかぎり手順は省略する。そのうえ料理に合わせて材料をきちんとそろえるのではなく、手元にあるものでなんとかすませようとする。
いい加減にやってつくれる料理はもちろんたくさんあるし、ふだんはそれでなんとかなる。ところが、私は好奇心が旺盛で、レストランで食べておいしかった料理や、本のなかで読んだ料理をすぐに試してみたくなる。
先日も本のなかにグリーン・ジェロー・サラダというのが出てきて、どうしてもつくってみたくなった。早速、インターネットでレシピを検索してみた。ところが、アメリカのレシピだから、近所のスーパーにはライム・ゼリーなんて売っていない。そこで、ゼラチンとライムで代用したのが失敗のもと。待てど暮らせどゼリーにならないのだ。ゼラチンの袋をよく読んでみると、酸がきつすぎたり、パイナップルのようなたんぱく質分解酵素を含む果実を生で加えると固まりません、とちゃんと書いてあるではないか。結局、その日はチャプチャプの白い液体のなかに、キャベツやパイナップルが浮かぶ不気味なものを食べるはめになった。
そして、昨日。サークーサイムーという豚肉をタピオカで包んで蒸すタイ料理に兆戦した。6時半ごろになってやおら料理の本を見ると、タピオカを1時間水に浸けろと書いてある。そんな余裕はない。タピオカの袋には15分から20分ゆでるとなっている。そうだ、ゆでれば時間短縮になる。そこでタピオカをゆでてから、ふと別の料理の本を見てみると、だんごに丸めているタピオカは明らかに不透明だ。いったん火を通したタピオカはつるんと粒になり、どうやってもまとまらない。片栗粉を混ぜておはぎみたいにサランラップを使って絞り、なんとかだんご状にしたものの、蒸している最中にばらばら事件に。仕方がないので、スプーンですくってレタスに包んで食べることにした。なかのピーナッツと豚肉がタピオカとよく合って、おいしいことにはおいしかったのだが……。
考えてみれば、最初に新しい料理を考案した人は試行錯誤を繰り返し、その結果、いちばんうまくできる材料や手順を見いだしたのだろう。その秘訣が書かれているのがレシピだ。ただ、たいがいのレシピには、なぜ下ごしらえをするのかや、なぜその手順なのか、なぜその材料なのかは詳しく書かれていない。それが実際どのくらい重要なのかは、失敗して初めてわかる。もちろん、レシピどおりに忠実につくるに越したことはないのだろうが、実際にはそれができないこともある。ほかの材料で代用したりやり方を変えたりする場合は、何なら可能で、譲れないポイントは何かを見抜かなければならない。それにはやはり、つくる前にレシピや説明書をじっくり読むのがいちばんなのだろう。そのほうが結局は時間もかからないし、妙なものを食べずにすむのだ。これって料理にかぎらずいろんなことにあてはまるんだろうな、と反省することしきり。