2001年12月25日火曜日

バードウォッチング・ツアー

 先日、バンコクポスト紙でバードウォッチング・ツアーの案内を見つけ、娘とふたりで参加してみた。行き先は、バンコクから車で3時間ほど行ったところにあるカオヤイ国立公園。オーガナイザーの夫婦のほか参加したのは、タイ人女性ふたり、カナダの女性博士、オーストラリアの年配の男性、私たち親子だけで、それにタイ人の若い男性がツアーの一部だけ参加した。  

 日本の野鳥観察会にも行ったことがないのに大丈夫だろうか、と娘はかなり心配していたが、いざ鳥を見はじめると、そんな不安はどこへやら。英語もタイ語もろくにしゃべれないのに、いま見た鳥がなんだったのか知りたい一心で、リーダーをはじめ、いろいろな人に自分から質問しだした。子供はうちの娘ひとりだけだったこともあり、望遠鏡はたいがい最初にのぞかせてもらい、チョコレートを分けてもらったり、図鑑を見せてもらったり、とみんなに気遣ってもらい、娘は大満足だった。  

 リーダーのおじさんは鳥の声がすべて聞きわけられるらしく、声でおよその場所を察知して、すばやく鳥を見つける。なんの変哲もない茶色の小さな鳥でも、ぱっと名前を言い当てるところはまるで手品だ。おじさんが笛を吹くと鳥が現われ、鳴き声をまねると、向こうから鳥が応える。はるか彼方の木にいる不恰好なくちばしのカササギサイチョウやシワコブサイチョウも、望遠鏡で見つけてしまう。鳥の絵も描く人で、よく似た鳥の見分け方をさささっと絵で示してくれたりもする。  

 おかげでたった2日のツアーで、70種類くらいの鳥を見ることができた。真っ赤なヒイロサンショウクイや、緑色のキビタイコノハドリ、猫のような声のメジロヒヨドリ、2本の糸のような尾の先にラケットがついたヒメカッコウなど、ふだんバンコクでは絶対に見られない珍しい鳥が、そこいらじゅうにいた。なかでもすばらしかったのはキヌバネドリ。その名のとおり絹のようにつややかな羽根をしていて、薄暗い林のなかで長い尾を垂らし、どんよりした目で虫を探している様子はこの世の生き物には見えない。今回のツアーではズアカキヌバネドリとOrange-breasted Trogonの2種類を見た。  

 でも、私がいちばん気に入ったのは、素っ頓狂な顔のエボシヒヨドリ。まさにナーラック(カワイイ)。この鳥は自分でも見つけられるようになったので、それがまたいい。鳥の声を聞いて、姿を見て、自分で名前が当てられるようになると、バードウォッチングはますます楽しくなる。  

 家に帰った翌日、娘がぼーっとした顔で言った。「なんだかナルニアのようなおとぎの国から帰ってきたみたい。たった2日間だったんなんて信じられない」。この短期集中講座で、四方八方をすばやく見るのと、耳をすますのと、忍び歩きは確実にうまくなった。娘はいま今回見た大量の鳥を、あちこちの図鑑や百科辞典やインターネットで調べている。新しい鳥を見るたびに、システム手帳にその鳥用のページをつくり、細かい情報とともに、目撃した記録を書き込むのが趣味なので、これからがたいへんだ。娘にとって、野鳥はポケモンのようなもので、そのページをつくるとゲットできたような気がするらしい。野鳥カードなんていうのがあって、その鳥を見たら目撃場所と日時を野鳥の会などに報告して、そのカードがもらえたら、テレビやコンピューター・ゲームに夢中な子供の関心も、少しは自然界に向くんじゃないだろうか。誰かこのアイデア採用してくれないかなあ!

 ズアカキヌバネドリ

 エボシヒヨドリ