2010年10月31日日曜日

秋のお祭り

 今年も、我孫子で開かれたジャパン・バード・フェスティバルに参加してきた。鳥を見るのは好きだけれど、どちらかと言うと、バードウォッチャーの保護者兼図鑑・スコープ持ちとして、鳥見に参加することの多かった私は、鳥好きの娘が渡英してしまったこの秋のお祭りはいったいどうしようかと、実はひそかに悩んでいた。たとえて言うならば、子供が卒業したあとも、部活の試合にお母さんが顔をだすようなもので、なんとも恰好が悪いのだ。それでも、例年お世話になっているワイバードと「こまたん」がまた早々に誘ってくださったので、意を決して「お母さん」だけ参加することにした。  

 このところ多忙だったため、今年はほとんど新商品がない。昨年つくった鳥のお手玉と小物入れの「きびだんご」シリーズに、スズメとエトピリカが加わったくらいだ。娘がデザインするこの鳥の正面顔のお手玉は、点のような小さい目と、おなかに張りついた無防備な足と、背中のリアルな羽の模様が特徴で、いわゆるかわいいキャラクターとはほど遠い代物だ。それでも、甥っ子が幼かったころを思いださせるこのお手玉の鳥は、見るたびに表情を変えるようで、目が合うと「遊んでくれ~」と言っているように思えてならない。  

 ぎびだんごの原型は、おそらく娘が幼いころよくつくってやったスウェーデンのウォルドルフ人形にあるのだろう。人形の目は、子供のそのときどきの心情を映せるように、できる限り小さく刺繍するという考え方に私は大きな共感を覚えた。ダ・ヴィンチがモナリザの絵で使ったスフマートの手法にもどこか似ている。  

 いちばん新しくつくったエトピリカは、赤く吊り上ったアイリングのなかに小さな黄色い目があって、ムーミンのヘムレンさんのような白髪が後ろになびいており、一見、意地悪な魔法使いにも見える。それならいっそのこと、カボチャと一緒にハロウィーンの飾りにでもしようと並べてみたところ、さすがはバードフェスティバル。こんな鳥が意外に人気で、小学校低学年と思われる子でも、一目見るなり、「あっ、エトピリカ!」と触っているほどだった。  

 お手玉のかたちをそのまま拡大してつくったリュックサックが、今年は二つとも売れたのもうれしかった。そう言えば、昨年の第一作のメジロ・リュックを買ってくださった方は、「大事にします」と、まるで子犬や子猫をもらうみたいに言ってくださった。いまごろ、あのメジ君はどうしているだろうか。いつか、歩き始めたばかりの子が、このリュックにトレーニングパンツとぬいぐるみを入れて、よちよち歩いているところを見てみたい。  

 売上げそのものはさほど芳しくなかったが、娘があちこちでお世話になった方たちが大勢ブースに立ち寄って声をかけてくださったので、日ごろ家で一人パソコンに向かっている私には、それが何よりも楽しかった。自然のなかで鳥を見るのが好き、ということだけでつながっているバードウォッチャーの世界は、もともと多様な人が適度な距離を置きながらゆるりと結びついていて、新しい仲間を自然に受け入れてくれる。とかく排他的になりがちな共同体主義と、アイデンティティの問題に関する本をいま訳していることもあって、バードウォッチャーの世界の居心地よさを実感した2日間だった。  

 11月7日の大磯の宿場祭りでは、また「あおばとや」にお世話になる予定だ。アオバトはついに大磯町の町の鳥に昇格したらしく、今年は大いに盛り上がりそうだ。