2002年8月30日金曜日

夏休みの自由研究

 夏休みの自由研究で和歌山の小中学生の兄弟が金鉱脈発見、という記事を少し前に新聞で読んだ。2年前に父親と一緒に鉱物採集に出かけて発見した石が、鑑定してもらった結果、金と手稲石であることがわかり、しかも高品位の金鉱脈の一部だったという。発見した子供たちはさぞかし得意だろう。金の埋蔵量は少なく事業化は難しいらしいので、これで大金持になれるわけではないが、こうした体験が子供の将来に与える影響は、それ以上に貴重だと思う。  

 私たちの世代もそうだが、いまの子供はワークやドリルをやり、ひたすら反復練習や暗記するのが勉強だと思いこんでいる。それでは勉強など苦痛以外のなんでもない。でも、本来の勉強は自分で何かに興味をもち、観察したり調べたりして新たな発見をすることではないだろうか。それなら、誰にとっても楽しい。  もちろん、親のほうにいろいろな知識があればそれに越したことはない。娘の友達にもお父さんが地層の研究に連れていってくれたり、お母さんが古地図の研究を手伝ってくれたり、朝早く一家でカブトムシを見に出かけたりする家庭がある。そういう家庭に育った子供はなぜかみな伸び伸びとしていて、何をやらせてもやる気や自主性があるような気がする。夏祭りに出かけても、そういう子はセミが羽化するところを目ざとく見つけ、じっと観察しているらしい。お祭りはじゃんけんバナナや人形すくいだけではなかったのだ。  

 それでも、自分にそういった知識がないからといってあきらめる必要はない。世の中には親切な人も大勢いるものだ。先日、娘がいとこたちと大磯の照ケ崎にアオバトを見に行った。そこの海岸でおもしろいおじさんに会い、一緒にアオバトの羽や化石を拾い、いろんなことを教わり、大喜びで帰ってきた。羽というより、生々しい翼のようなものまで拾ってきたらしく、臭い、気持悪いと言いながらも、分解して洗っていた。(私はこういうものがとっても苦手で、後ろを見ないようにしていたので、詳細は不明。)

 私はろくな知識はないが、運転手やシェルパとして協力はしたと思う。先月のコウモリ通信で書いた北八ヶ岳の旅は大成功だった。私たちがキャンプした双子池周辺は、夏の真っ盛りだというのにほとんど人がいなくて、鳥はたくさんというすばらしい穴場だった。夜はヨタカの声を聞きながら眠り、朝はバードクロックのすべての時間の鳥が一斉に鳴きだしたかと思うほどの大合唱で目がさめる。コマドリ、コガラ、ヒガラ、メボソムシクイ、ホシガラス、ルリビタキ、キクイタダキ、ウグイスなど、キャンプにいながらにして存分にバードウォッチングが楽しめた。  

 初めのうち山を歩きながら友達にせっせとメールを送っていた甥も、3日間いるうちに自然のおもしろさに興味をもったようだ。「お山の貸し切りだね」と喜んでいた姪は、それこそ夏休みの自由研究で、自分が見た鳥をまとめている。姪は、旅行の少し前に誕生日祝いにあげた双眼鏡と図鑑をもって大張りきりだった。キャンプ場で姪は、黒に白い斑点のある羽をたくさん見つけた。私は斑点を見て勝手にホシガラスの羽と決め込んだが、帰ってきてから子供たちが本屋で(!)羽の図鑑を調べたら、アカゲラだった。アカゲラの縞々はこの点々が重なってそう見えるらしい。

 子供に必要なのはちょっとしたきっかけなんだと、この旅行で改めて思った。興味さえもてば、あとは子供が自分で伸びていく。学校の勉強も、もう少し自由で楽しいものにならないかなあと思う。