2007年6月30日土曜日

大桟橋

 以前から見たいと思っていた横浜の新しい大桟橋国際客船ターミナルへ、ついに行ってきた。竣工したのは2002年だから、もうあまり新しいとは言えないが、長らく取り組んでいた建築の本に大桟橋のことがちらりと書かれていて、こんな近くに住んでいながら、まだ見ていなかったので、ぜひ自分の目で確かめたいと思ったのだ。  

 電車賃をケチって桜木町から歩いたおかげで、途中、思いがけず横浜の古い建物もたくさん見ることができた。神奈川県立歴史博物館は、あとで調べたら、旧横浜正金銀行本店で、明治37年(1904年)に妻木頼黄が設計していた。横浜市開港記念会館は大正6年(1917年)に建設された辰野式フリークラシックスタイル。辰野式?と思ったら、東京駅を設計した辰野金吾に似せた……という意味らしく、確かによく似ている。 

 大桟橋に行ったのは、これが初めてではない。なにしろ、30年以上昔、ここからソ連船ジェルジンスキー号に乗ってナホトカへ渡ったこともあるのだ。ただの旅行なのに、親戚一同が見送りにきてくれ、紙テープを投げて出航した。いまはもう豪華客船がたまに入港する以外は、クルーズ船しか利用しないので、大桟橋ものどかな場所に変わっている。  

 新しいターミナルを設計したのは若い建築家夫妻で、奥さんのファッシド・ムサヴィはイラン出身だ。ターミナルは全体が板張りで巨大な船の甲板のように見え、そのうえ芝まで植えてあるので、海に突きだした半島のようでもある。潮風に吹かれながら、のんびりと横浜港を眺めて過ごすにはもってこいの場所だ。複雑な曲線を描いて張られている板は、イペというブラジルからの丈夫な木材らしい。板張りの床はよい雰囲気をだしているけれど、これもアマゾンの森林伐採につながるのかなと、ちょっと気になった。ターミナルの突先まで行ってみると、年配のおじさんがお連れの女性たちに、「ここはベストスポットで、キング、クィーン、ジャックが全部見えるそうだ」と、少々自慢げに話していた。よほど、なんの話ですかと聞こうかと思ったが、やめておいた。 

「くじらのおなかアフタヌーンコンサート」で、美人女性トリオの演奏を無料で楽しませてもらったあと、赤れんが経由でパシフィコ横浜まで歩いていった。旅行会社にいたころ、この場所へは何度も足を運んだ。最初に担当した道路の会議のときは、まだインターコンチネンタルホテルと遊園地しかなかった。ぷかり桟橋から船に乗って建設中のアクアラインの人工島まで行ったのもこの会議のときだった。その後、ランドマークタワーが建設されたので、ノルウェーのエージェントを連れて最上階にある宴会場を見に行ったこともある。彼は足元まであるガラス窓にすくんでしまい、「オスロにはこんな高層ビルはないからね」と苦笑していた。  

 家に帰ってから、今日見た建物を調べてみたら、開港記念会館がジャックの塔(36m)と呼ばれていることがわかった。おじさんが話していたのはこのことかと思い、さらに調べると、キングは県庁本館の塔で高さ49m、クィーンは横浜税関、51mだとわかった。ちなみに、ランドマークは295.8m。それですら、いまは周囲にたくさんビルが建っているのであまり高く見えない。横浜税関は昭和初期の建物で、大正時代のものは震災で崩れてしまい、赤れんがパーク整備時に遺構が見つかったため、いまは花壇として利用されている。  

 久々に歩き回ったので足が棒のようになったが、今日は有意義な一日だった。

 神奈川県立歴史博物館

 横浜市開港記念会館

 大桟橋国際客船ターミナル

 ターミナル内

大桟橋からのみなとみらい

 横浜税関

 税関遺構