2009年5月2日土曜日

娘の初個展@根津

 根津のカフェ・コパンで展示はいかが、なりさちゃんのイラスト展はどうでしょう、という誘惑的なメールを一月末に野中邦子さんからいただいたとき、最初はどうしようかと親子で迷った。展覧会にだした作品はいくつかあるし、スケッチブックのなかに眠ったままの絵ならいくらでもあるけれど、はたしてカフェの壁に飾れるだけの作品が揃うだろうか? 地元でもない根津まで、わざわざ見にきてくださる人がいるだろうか? ただでさえ多忙な娘に、こんな一大プロジェクトをやりとげるだけの時間がとれるだろうか?  

 あれこれ悩んだ末に、結局はいつもの楽観主義が勝った。何かをやって後悔するほうが、やらなかったことを後悔するよりはいい。たとえ失敗に終っても、失敗という経験はできるのだから。どうせ短い人生、なんでもやってみなければ損。誰だって最初はうまく行かないものだ! 

 というわけで、先月のコウモリ通信で宣伝させていただいたとおり、娘の初めてのミニ個展、「クイナ通り展」を敢行した。娘は展覧会のために土壇場まで新たな作品を描き、私は展示費用を賄うための販売グッズとして、いつものビーズ鳥と、娘が新たに始めたステンシル版のブックカバー、娘の絵のポストカードなどを仕事の合間に必死で制作した。  

 そんな急ごしらえの催しだったが、ありがたいことに、日ごろ娘の活動を見守ってくださるさまざまな人たちが根津まで訪ねてきてくれ、こぢんまりした店内はまさしくカフェ・コパン(仲間)という雰囲気になった。遠路はるばるいらした方や、大雨や強風のなかを家族連れできてくださった人たち、二度も来店していただいた方、メーリングリストやホームページで宣伝してくださった方など、実に多くの人たちの温かいお心遣いをいただき、おかげで無事に二週間の展示を終えることができた。販売グッズも思いがけずたくさん売れ、娘の絵もめでたく数点買っていただき、大きな励みとなった。みなさま、本当にありがとうございました。 

 実は、今回の宣伝はがきを店内に置いてくださったバードウォッチングの専門店ホビーズワールドで、これを機に娘のステンシル・デザインのブックカバーを売っていただけることになったという、うれしいおまけもついた。家に一人残されて、四六時中PCの前に座りっぱなしの、黒子的な翻訳の仕事に疲れ、自分を見失いかけていた数年前に、気晴らしに始めた私のささやかな副業が、いまこうして少しずつ実り始めたのだ。 

 それにしても、ビーズ鳥で自分を表現するはずだったのが、いつの間にか私は娘がデザインしたものを、原始的なやり方で量産する摺り師兼お針子になっているような気がしないでもない。そのせいで腱鞘炎にもなりかけている。副業のために、ますます時間もなくなり、自分で自分の首を絞めているような、悪い予感もする。 

 やはりブッシュマンの生き方のほうが賢いのだろうか? 水のないカラハリ砂漠で生きるブッシュマンの生き残り戦略は、無駄なエネルギーを使わず、ひたすら日陰でじっとして水分が失われないようにすることだそうだ。まあ、ここはカラハリ砂漠ではないから、当面は創業の苦しみを味わっているのだと信じることにしよう。私のささやかな抵抗のしるしに、娘のデザインのカバーにも、ビーズ鳥のチャームをしおりの先につけている。

クイナ通り展


 根津神社のつつじ

 近所の駄菓子屋
 
 娘デザインのブックカバー

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