2020年10月21日水曜日

人形の家

 9月初めに福音館から刊行されたアリソン・アトリーの『はりねずみともぐらのぼうけんりょこう』という児童書に、娘のなりさが挿絵を描かせてもらった。このたび岸野衣里子さんが描いた『クリスマスの小屋』の挿絵とともに、銀座の教文館ナルニア国で原画展が開催されることになったのだが、娘がモデルにした古い人形の家も展示したいと言われ、しばらく修理・洗濯に追われていた。娘や友達、あるいは母のピアノ教室の教え子たちが遊んだ結果、人形たちは脱毛症になり、家具は壊れ、乾電池ケースは完全に錆びつき、そのまま展示するには忍びない状態だったもので。  

 この人形の家は、会社勤めをしていたころ、毎週末に少しずつ半年かけてつくったもので、私が子供のころに読んだルーマー・ゴッデンの『人形の家』の見返しについていた挿絵をモデルにしたものだった。物語の家の電灯はつかなかったと思うが、私はどうしてもつけたくて、会社の昼休みに抜けだしてラジオ会館で、豆電球やソケット、ケース、トグルスイッチを買い、店員に配線図を描いてもらって、どうにか完成させた。いまや豆電球を買うのも一苦労で、電灯は諦めようかと思ったのだが、娘の残念そうな顔に思い直し、スタビードライバーを買って試したところ、錆びついたケースが外れたので、頑張ることに。ただ、難しい配線はやめて、単3電池1本で1.5Vの豆電球がつくセットなるものをネットで買い、四半世紀前に買ったのとほぼ同じトグルスイッチを追加で2つ買い、老眼でハンダ付けに初挑戦して、なんとか灯りがついたときは、久々に達成感があった!  

 こんな玩具で遊んで子供時代を過ごし、イギリスで過ごした3年間に田舎の光景や動物をたくさん見てきた娘が、消しゴム判子とリノリウム版画で作成した白黒の挿絵だ。これから年末にかけて、銀座までおでかけの折に、覗いていただけると嬉しい。 この本に関する娘のブログ記事はこちら。  教文館の原画展の案内はこちら

 このアトリーの仕事と並行して、娘はもう一冊、フランスのラ・マルティニエール・ジュネス社からフランスの鳥類学者フィリップ・J・デュボワ著、『Oiseaux: Des Alliés à Protéger』(鳥、守るべき仲間)の挿絵の仕事も請け負っていた。こちらは本そのものも日本から購入するのは難しそうだが、先日、ようやく届いた見本はじつにきれいな仕上がりになっていた。

 たくさん遊んでもらい、くたびれた人形たち

 この奥に錆びついた電池ケースがあった

 修理後

 久々に灯った明かり

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